概要
展示タイトルである「出現するリアル・出現させるリアル」は、本当に表現したいもの以外の要素をそぎ落とし、意思そのものを否定した描画(フロッタージュ=拓版、拓刷り)と絵筆による描写の緻密なバランスを保ちつつ、リアルな画面を形成すること…という作者の取り組みを反映している。フロッタージュは、シュルレアリスムから派生した技法として知られているが、それを伝統的な写実的細密描写と並列同居させ、新たな世界観を成立させようとする試みは新鮮である。扱う画材やモチーフにおいても、マンホールの蓋あるいは道路標識といった我々にとっては極めて身近な対象と直接擦写できる画布を組み合わせ、意匠が凝らされている。